レディースホームFAQA.基礎知識編

2.ピルの効用と副作用について

 

 
 

 ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤です。
 これはもともと女性の体内(卵巣)で自然に作られるホルモンで、エストロゲン(以下E)とプロゲステロン(以下P)が同時に出ているのは、女性の自然の周期では排卵してから生理が来るまでの間と、そして妊娠している時です。
 ですから、ピルを服用するということは、簡単に言うと、
 ・排卵後から生理が来るまでの状態
   ないしは、
 ・妊娠している時と同じ状態を作り出すこと
 と同意であることを意味します。    

 これを利用すると、以下のような治療として使えるということになります。    

  1)ホルモンバランスが崩れているために不正出血を起こしている時
  2)予定生理をずらしたい時
  3)生理不順の時、生理が来ないので生理を起こしたい時
  4)生理痛がひどい時(子宮内膜症を含む)
  5)月経前緊張症に対して
  6)避妊をしたい時    

 1)は、EあるいはPの分泌が規律的ではないために子宮内膜が破綻して出血をしている場合(精神的・肉体的疲労などにより排卵が起こらなくなり、その結果不正出血を招いている時など)EとPの合剤であるピルを服用することで子宮内膜の破綻が修復され、結果として出血が止まって来るという作用を示します。
 カウフマン療法はこれにさらにエストロゲン投与を組み合わせ、ホルモンを正常の人と同様に整え直すことで治療するものです 。  

 2)については、こちらを参考にして下さい。   

 3)に関しては、リズムを作ってきちんと生理を来させることを目的にピルを投与する場合がある、ということです。特に、かなり周期がばらばらで、時には3ヶ月以上来ないこともあるような人に対して、数ヶ月間投与する方法を採択することがあります。
 この時、最初にプレマリンのようなエストロゲン製剤を1週間くらい投与して、続けてピルを2週間服用するという方法を取ることがありますが、これをカウフマン療法といいます。生理不順だけでなく、不正出血に対しても有効な治療法です。
 また生理が来ないことに対しても、ピルをおよそ7日以上服用してから中止すると消退出血と言って生理のような出血を起こしてくることを利用して、生理のない人に対して生理を起こすことを目的に投与することもあります。
 

 4)は、子宮内膜症に対する「擬妊娠療法」という治療法です。
 子宮内膜症は妊娠して生理が来なくなることによって軽快してくることが知られていますが、これを応用して、ピルを服用することで妊娠した時と同じ状態を作り出して子宮内膜症を治療する、という方法です。
 これは、子宮内膜症でなくても生理痛がひどい人に対しては有効な方法であることが知られていますが、ピル自体の副作用のこともあり、よほどひどい人に対してのみ十分に副作用のことを理解していただいた上で処方されているものと思います。
 また、1999年9月から低用量ピルが解禁になりましたので、こちらの方がこれから生理痛がひどい人に対してだんだんと使われるようになっていくものと思います。
 子宮内膜症の薬物治療に関しては、こちらをご覧下さい。  

 5)ピルを服用し続けていくうちに、精神的な症状やら頭痛、吐き気、めまい、いらだちなど、いわゆる月経前緊張症と言われる症状群が軽快してくることが知られています。
  

 6)生理が終わった頃からおよそ3週間ピルの服用を続けていると、ピルを飲んでいる間は妊娠している時と同じ状態になりますから排卵も抑制されるようになります。
 このことを利用して、避妊を目的に使用することができます。
 通常は3週間ピルを服用し、止めたあと3〜4日で生理になりますから、生理が来たらその5日目あたりからまた3週間ピルを服用して・・・というふうに服用します。   

   以上が、ピルのおおよその効能についてです。

 

   

 ピルの副作用について

●肝機能障害
 ピルはホルモン剤ですから、その代謝は肝臓で行われます。したがって、ピルを飲み続けていると、肝機能障害を起こしてくることがありますので、定期的に検査をしてチェックしておかなければなりません。
 

●心臓・血管系に対する影響
 血液凝固能が亢進されるため血栓症を起こしやすいということがありますので、心臓に疾患のある方(特に狭心症や心筋梗塞)や、高血圧の方、高脂血症・高コレステロール血症の方、脳血管障害(脳卒中など)の既往のある方などはよほど注意しないと命の危険があるということを意味します。決して多いと言える副作用ではありませんが、しかし忘れてはならない副作用でもあります。
  

●喫煙
 また、喫煙者では非喫煙者よりも明らかに心臓・血管系への障害が発生しやすいといわれていますので、ピルを服用するならば禁煙をしないと危険であると言えます。
  

●浮腫・体重増加
 そして女性の方がもっとも忌み嫌う副作用が、太るということでしょう。短期間では体重増加は顕著にはなりませんが、服用を続けていくうちに次第に肥満傾向が現れてきます。
 また、水分が貯留しやすくなるためにむくみが起きやすくなります。
   

●乳腺肥大
 これはむしろ多くの女性に歓迎される副作用かもしれません。しかし、服用中は胸が張って痛むということにもつながりますので、必ずしも喜ばしい作用ともいいかねるでしょう。
  

●性欲減退
 妊娠中と同様に、ピル服用中は性欲が減退してきます。
  

●子宮筋腫への影響
 子宮筋腫は、エストロゲンに依存して増大するといわれています。したがって、ピル内服により筋腫が増大する可能性が大いにありますので、子宮筋腫を持っている方は要注意でしょう。
   

●カンジダへの影響
 ピル内服により、プロゲステロンの影響で膣内は酸性に傾きやすくなります。
 この影響により、カンジダ膣炎を起こしやすくなります。このことはもちろん、妊娠中にもいえることです。
 生理前に良くかゆみを感じる人がいるものと思いますが、この理由も、生理前はピルを内服している時と同じようなホルモン状態にあることを考えれば理解できるものと思います。
   

●その他
 糖尿病があると悪化するといわれています。
 家系に糖尿病の人のいる方は注意して下さい。
 他には、皮膚に色素沈着を起こしやすく、そばかすが出てくることがある、気分的に滅入ったようになることがある、高血圧を誘発することがある、などがあります。   

   以上、ピルの副作用についてです。

 

 

  *参考*
通常時とピル服用中のホルモンの変化のグラフ

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