●擬閉経療法について さて、次いで擬閉経療法についてお話ししましょう。
擬閉経療法に用いる薬剤としては、代表的なところでは以下のような薬剤があります。
1)ボンゾール、ダイナゾール
2)スプレキュア、ナサニール
3)リュープリン
3つに分けたのは、それぞれが1)内服薬、2)経鼻薬、3)注射、による投与法であるためですが、最近スプレキュアにも注射薬が登場しています。
いずれの治療法でも、薬を使用することによる目標は同じで、擬似的に更年期状態を作り出すことにあります。治療期間は通常は6ヶ月間です。
さて、1)ではあまり顕著ではありませんが2)、3)においては、治療開始後2週間ほどの間に一時的に減少させるはずのエストロゲンが増量します。この現象をFlare
upといいますが、これは薬が脳下垂体にストックしてある、卵巣を刺激するホルモンを押し出すために起こるもので、脳下垂体における刺激ホルモンを枯渇させるように働くために起こるものです。
このため、薬を使用し始めてから約2週間ほどの間は、エストロゲン増量に伴う種々の症状が出現します。
主なものとしては、むくみ、頭痛、胸の張り、透明なおりものの増加、ヒステリックな症状、性欲の増加などがあげられるでしょう。
治療開始後2週間以上を経過してくると、今度は逆にエストロゲンが更年期レベルまでに減少していくために起こる症状が出現し始めます。通常、薬を使用し始めてから1ヶ月以上を経過すると、だいたいエストロゲン量は更年期レベルに減少しますので、この頃から症状が現れ始めるのが普通でしょう。
どのような症状が出てくるかというと・・・
顔のほてり、のぼせ感、動悸、異常発汗、時に冷え性、胸部苦悶感、呼吸ひっ迫感、嘔気・嘔吐、むくみ、食欲の変化、頭痛、肩や首のこり、背中の張り、めまい、耳鳴り、不眠、眠りが浅い、夜中に一度目が覚めてしまうと眠れなくなる、いらいらする、焦燥感、寂しいキモチになる、ヒステリー、腰痛、関節痛、筋肉痛、易疲労感、やる気が失せる、動くのがおっくうになる、性欲の減少(あるいは欠如)、性器の乾燥感・萎縮感、手足のしびれ感、知覚過敏、虫がはうような違和感、おりものの異常
などなど、種々雑多な症状が現れてくるものです。
いずれにしてもこれらの症状はエストロゲンの欠乏に伴う症状であり、したがって我慢できない、あるいは生活する上で差し支えがあると感じる程度のものであれば、エストロゲンを補充することで改善することは可能です。(アドバック療法といいます)
また、治療中の不正出血についてですが、これは1)で最も起こりやすく、3)で最も少ないものと考えて良く、また種々の更年期様の症状が少ないほど不正出血を起こしやすいと思って良いでしょう。
治療中に見られる出血はたいてい少量で数日間で止まってしまうものですが、中にはかなり大量に出る場合もあり、このような場合には必ず先生の指示を仰いで下さい。
ただし、自己判断で薬の使用を中止しないように注意して下さい。
治療期間は通常6ヶ月間と記載しましたが、これは骨粗鬆症を起こす可能性が少なく、かつ子宮内膜症に対しても有効な治療期間として決められたものです。(→こちらの記載を参照にして下さい)よって、だいたいどの治療についても約半年間をメドとして終了するわけですが、では終了したあとどのくらいで生理が復活するものなのでしょうか。
通常は、治療終了後半月〜1ヶ月ほどで排卵が復活しますので、生理はそれから約2週間後、すなわち治療終了後約1ヶ月〜1ヶ月半ほどで来るのが普通だと考えて良いでしょう。
したがって、多少個人差もあることも考慮して、治療終了後2ヶ月以上経っても生理が来ない場合は病院を受診した方が良いと言えるでしょう。ただし、これはもともと生理が順調に来ていた人の場合であって、もともと生理が不順であった人の場合は排卵が遅れることが十分に考えられますから生理が来る時期もそれなりに遅れることになります。とはいえ、治療終了後3ヶ月以上経っても生理がないのならやはり病院を受診すべきでしょう。
なお、病院で基礎体温をつけるように指導されることが多いと思いますが、指導されていない場合でも治療終了後には基礎体温をつけておいた方が良いでしょう。基礎体温をつけておくことによって排卵があったのかどうかがある程度判別がつきますし、それによって病院へ行く必要があるかどうかの判断もつけやすくなります。
繰り返しになりますが、もともと生理が順調にあった人なら、治療終了後半月〜1ヶ月ほどで排卵が復活するのが普通ですから、基礎体温上で1ヶ月半以上低温期が続いている場合には病院を受診した方が良いものと考えて下さい。
|