4.ホルモンバランスを崩すって、どういうことですか? |
不正出血などのために病院で診察を受けると、「ホルモンバランスが崩れているのが原因である」と説明を受けたことがある方は多いものと思います。なんとなく納得できるようだけど、じゃあ実際ホルモンバランスが崩れたことと出血したこととはどうつながるのか?と考えると、なかなかわからないのではないでしょうか? そもそも、ホルモンバランスとはなんでしょう? それにはまず、月経周期における正常な女性ホルモンの分泌状態を知っておかなければなりません。まず、下のグラフを見て下さい。これは正常な性周期における女性ホルモンの分泌状態を表したものです。 |
|
さて、エストロゲン、プロゲステロンは子宮内膜に対して着床の準備をするように働きます。 具体的にはエストロゲンは子宮内膜を増殖させて内膜に厚みを持たせるように作用し、プロゲステロンは厚みを持った子宮内膜に栄養分が行き渡るように作用します。このような形で、もしも受精卵が着床してきた場合にはその受精卵を育てていけるだけの環境を提供して、受精卵が着床するのを待っているわけです。 そして、もしも受精しなかった時には、排卵からおよそ2週間後になると黄体は自然に退縮するようになっているために、黄体から分泌されている両ホルモンともに急激に減少し、その結果 子宮内膜が一斉に剥がれ始めるために出血が起こって生理になる、というわけです。 |
この排卵を含む一連の変化は、常に脳内の間脳という部分によって調節されており、そのため精神的ストレスや環境の変化、肉体的ストレスなどによる間脳への影響が、もろに卵巣に影響しやすく、結果として卵胞や黄体の働きを左右することになり、そこから分泌されているエストロゲンやプロゲステロンにも影響することになります。つまり、精神的ストレスなどがこれら二種類のホルモンの分泌量に変化を来すということで、それが「ホルモンのバランスを崩す」ということなのです。 先述のようにこれらのホルモンは、子宮内膜を増殖させ受精卵の発育に適した環境を整える働きを持っていますが、このどちらのホルモンが不足しても子宮内膜の剥脱を招いて出血を起こす可能性があるのです。 つまり、精神的ストレス等が不正出血を起こす原因となるのはこういう理由からなのです。 また、「ホルモンバランスが悪い」という言い方をされた場合でも根本的には同じことです。 原因は、卵巣の働きがもともとあまり良くない、間脳や脳下垂体の働きがもともとあまり良くない、過度のダイエットをしたことにより間脳の調節機構が低下してしまった、LHやFSH(卵巣を刺激するホルモンです)の分泌に支障を来すホルモン異常がある(高プロラクチン血症、甲状腺機能異常など)など、様々なものが考えられるにしても、結果的に排卵がきちんと起こっていないという病態があるのと同じことであって、それはすなわち「ホルモンバランスが崩れている」状態であることには違いがないのです。 |
ですから、治療の根本は排卵をきちんとさせることにあるわけで、そのために排卵誘発剤を使ったりもするわけです。もちろん、まだ未婚であるとか若年であるなどの個人的背景を考慮して治療が行われますから、まだ必要ないと判断すれば排卵誘発をせずに注射でリズムをつける方法(カウフマン療法といいます)や低用量ピルを用いる方法などを選択する場合も当然考えられます。また「自然に経過を見る」というのも一つの方法で、食習慣や生活態度に注意を払うことだけでも自然に排卵が起こることも十分にあり得ることです。その個人の背景を考慮した上で選択すべき一つの方法であると言えるでしょう。 以上が、ホルモンバランスについてのおおまかな解説です。 |
■関連するリンク
・ピルの効能と副作用について
・カウフマン療法について教えてください
・生理の量が少ない、日にちが短い
・生理が止まらない
・中間期(生理と生理の間)に出血する
・高温期がなくずっと低温のままである
・排卵がない場合にはどういう治療をする?