レディースホームFAQE.基礎体温と排卵に関するもの編

7.排卵がない場合にはどういう治療をする?

 

 

 まず、未婚で生理がまばらだという場合には、通常は排卵誘発は行いません。するとしても、試しに一度誘発してみるという程度のもので、毎回排卵誘発をするということはあまりしないのが普通です。
 これは自然に排卵が起こることが期待できるということもありますし、また未婚であればすぐに妊娠出産を望んでいるわけではないという理由からです。  

 一方、既婚で妊娠しても良い状況にある、もしくは望んでいるのになかなか妊娠しない、という場合には、排卵誘発を行います。

 

 
 
 

 

 上の写真は、経膣式超音波による卵胞のモニターの例です。
 左の写真は排卵期の子宮内膜を示したもので、中央に木の葉状を呈した子宮内膜が描画されています。この厚さは排卵期ではおおよそ1cm前後であるのが普通です。
 右の写真は、排卵期の卵巣を示したものです。
 写真のうち、左側が右の卵巣、右側が左の卵巣を描画していますが、このうち左側の卵巣(すなわち写真右半分の方)に発育した卵胞(成熟卵胞)が、黒い円形物として描画されています。排卵期の卵胞の大きさは、直径でおおよそ2cm前後あるのが普通です。

 月経周期のいずれの時期にも、子宮・卵巣にこのような状態が認められない場合、排卵がないと判断し、以下のような治療を行うことになります。

 最初はクロミフェン(商品名;クロミッド、フェミロンなど)またはシクロフェニル(商品名;セキソビッド)という内服薬を使用してみるのが普通でしょう。
 これらの薬は、間脳・脳下垂体系を刺激して排卵誘発を行う薬です。
 通常は5日目から(先生によっては3日目から)5日間毎日服用する、という形で服用します。クロミフェンは1日1錠ないしは1日2錠を朝晩に分けて、セキソビッドは1日2〜6錠を1日2〜3回服用します。
 いずれの内服でも、頻度としてはかなり少ないですが卵巣の過剰刺激を来す可能性があり、よって多胎妊娠やOHSSに中止しなければなりません。OHSSに関しては別項目に記載がありますので、こちらをご覧になって下さい。
 ところで、これらの薬自体には抗エストロゲン作用があると言われており、その影響で排卵期の透明なおりものの量が減ったり、排卵期になっても子宮内膜が通常のように厚くならなくなったりという影響が出ることがあります。
 排卵はあると思われるのに(基礎体温が二相性であるのに)排卵期のおりものの量が少ないと思われる人は、先生にその旨をご相談なさってみて下さい。

 なお右に、クロミッドによる排卵誘発によって排卵が起こるようになった方の卵胞の写真を掲載しました。この写真では右の卵巣に15mmと18mm、左の卵巣に15mmと22mmの卵胞が描核されていますが、このように一度に数個の卵胞が成熟してくるようになるケースが多いことは否めません。  

 クロミフェン以外では、高プロラクチン血症に対して用いるブロモクリプチン(商品名;パーロデル、テルロンなど)や、子宮内膜症で用いる経鼻薬(スプレキュア、ナサニールなど)を単独ないしはクロミフェンと併用して用いることもあります。  

 しかし、これらの治療法では排卵が起こらない場合もあり、このようなケースでは直接卵胞を育てるための注射(HMG、ないしはFSH)を用いることになります。代表的な薬剤としては、フェルティノームP、フォリルモンP、ヒュメゴン、パーゴグリーン、ゴナドリール、HMG日研、パーゴナルなどがあります。このうち初めの二つの注射薬はLHをほとんど含まない純度の高いFSH製剤で、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)に対しての投与には他剤よりも適しているものと考えられています。
 また、これらの注射はクロミフェンやブロモクリプチンと併用することもあります。方法は、生理の終わり頃(5〜7日目)から毎日あるいは一日おきに筋肉注射をしていき、卵胞径がおおよそ20mm前後に成長したらHCG注射を行い排卵を起こす、という形で行います。
 これはHMG−HCG療法とも呼ばれています。

 

    

 この方法の利点は、卵巣自体の機能低下がない限り(つまり更年期のように、もう卵巣が働かなくなってきてしまったというような場合ではない限り)、まず排卵を起こすことが可能であるということですが、注射のために通院を余儀なくされること、1周期に何度も注射をする必要があること、そして一度にたくさんの卵胞が育ってきやすいということ、が欠点でもあります。
 そして、一度にたくさんの卵胞が育ちやすいということは、妊娠した場合に多胎を起こしやすいということ、さらにOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を招きやすいということにもつながります。(OHSSについてはこちらを参考にして下さい)
 特に、1回の注射の量を多くしないと排卵がなかなか起こらない人、あるいは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の人の場合にはOHSSを招きやすいので注意が必要です。
 (PCOSについてはこちらを参考にして下さい)
 

 体外受精・胚移植(IVF・ET)では一度に数個の成熟卵を採卵できる必要がありますので、むしろHMG注射で排卵誘発した方が都合が良く、このためHMG注射が好んで用いられているようです。  

  以上が、排卵誘発方法の主なところでしょう。

   ■関連するリンク
      無排卵月経に関して→こちら
      基礎体温の見方について→こちら