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4.OHSSってどういうものでしょうか?

 

 OHSSとは、卵巣過剰刺激症候群(Ovarian Hyperstimulation Syndrome)のことを示し、具体的にはHCG製剤を用いての排卵誘発の結果、卵巣が多嚢胞性に腫大し、随伴する様々な症状を引き起こす疾患のことを意味します。

病態:
 HMG製剤などで卵胞を刺激し発育させたあと、HCG注射により排卵を誘発すると、その後に卵巣に多嚢胞性変化を来たすようになります。これは、血管内から水分が漏出することが原因で起こる現象で、この結果血圧の低下を招いたり血液凝固能が亢進し血管内で血栓を起こしやすくなることで脳梗塞や心筋梗塞、肺梗塞などの生死に関わる大事に至る可能性も出てきます。
 また、卵巣の腫大自体は茎捻転を招くこともあり、開腹手術を必要とする場合もあります。  

治療:
 治療の基本は、入院による安静・点滴となります。
  血漿量減少に対しての輸液を確保しながら、血圧低下に対して昇圧剤を投与したり低タンパク血症に対してアルブミンを投与したりという治療を行います。
 通常はこの治療により、HCG注射後約1週間後頃をピークとして軽快に向かいますが、妊娠が成立した場合には着床後から妊娠組織部分からHCGが分泌され始めますので、妊娠初期の間は完全には軽快せずケースによっては妊娠初期の間ずっと入院治療が必要となることもあります。
 しかし、妊娠4ヶ月に入って胎盤が形成されてくると必ず軽快しますので、どれだけ長くても3ヶ月以内には退院できるものと思って良いでしょう。
 妊娠しなかった場合にはピーク(HCG注射後約1週間後頃)を過ぎると急速に症状が消退していき完全に治癒しますので、長期化したり次の排卵への影響を心配することはありません。  

 OHSSは適切な治療を施しさえすれば決して怖いものではありませんが、病院へ行かずに放っておくと血栓症や血圧低下によるショックなどで命を落とす危険性のある疾患です。
 HCG注射後からお腹が妙に張るあるいは痛い、お小水(尿)へ行く回数が激減した、肌が異常に乾燥してきた、呼吸が苦しい、胸が苦しいなどのおかしいと思う症状が出現してきたなら、即座に病院へ行くようにして下さい。