レディースホームFAQE.基礎体温と排卵に関するもの編

8.高プロラクチン血症とは?

 

 

 プロラクチンというのは脳下垂体から放出される刺激ホルモンで、乳腺を刺激して乳汁を分泌させるように働きますが、このホルモンの分泌が異常に亢進して乳汁分泌、無排卵月経などを起こすようになったものを高プロラクチン血症といいます。
 プロラクチンの血中濃度の正常値はおよそ15ng/ml以下ですが、高プロラクチン血症ではこれが異常高値を示すようになります。

 

 
 

       

 プロラクチンが多量に分泌されると卵巣での排卵が抑えられてしまい、その結果生理が止まってしまう場合が往々にしてあります。プロラクチンの分泌がさらに増量すると、生理が止まるだけでなく、子供を出産したことがないのにお乳が出てくるということになります。

 このような現象が起こるのは、流産後や人工妊娠中絶後、脳下垂体に腫瘍がある場合、胃潰瘍の治療による場合や精神科で治療を受けている場合ドグマチールという薬の場合が多い)などがありますが、原因が不明である場合もかなり多くのケースで見られます。

 脳下垂体に腫瘍がある場合にはもちろん手術の対象となるわけですが、このケースでは自覚的症状として頭痛、吐き気やめまいといった症状のほかに、視野の狭窄が起こる場合が多いようで、具体的には両目の外側から視野が狭まって来るようになります。このような自覚がある場合には、脳神経外科を受診するのが良いでしょう。(下のイラスト参照)
 高プロラクチン血症に対しては脳腫瘍を除くとパーロデル、パロラクチン、テルロンなどの投薬を行うのが普通で、不妊症の方に対してはプロラクチンの値が正常であってもこれらの投薬を行うことにより妊娠する率が高くなることも知られています。
 投薬をどれくらい続けなければいけないかについては、個人差がありますので何とも言えませんが、通常一日二回の内服で一週間以上投薬すれば正常値になることが多いと思います。しかし、投薬を中止すると再上昇することもまれではないため、服用を中止したあとでも何度か測定してみた方が良いでしょう。

 

 
 

     

 なお、高プロラクチン血症に伴って無排卵が起こり、その結果生理が不順になったり無排卵の状態にあった場合、これを治療することで排卵が復活し妊娠に至る場合があります。また、不妊治療の一つの方法として高プロラクチン血症治療薬を使用するのも同様のことを期待してものもので、これはプロラクチン値が正常範囲にあっても効果が期待できるものでもあります。

 ところで、こうして妊娠した場合、はたして妊娠が判明した時点で薬の服用を止めてしまっても良いのでしょうか?
 この答えは、下垂体腫瘍の方を除けば「YES」です。
 本来妊娠すると同時にプロラクチンの分泌が盛んになるものですから、何もそれをさえぎるようなことをする必要はないわけです。
 しかし、脳下垂体にプロラクチン産生腫瘍がある場合には、妊娠によって腫瘍が急激に腫大してくる危険があり、その結果視野に異常が現れたり頭痛や吐き気、めまいを感じたり、最悪の場合には下垂体卒中(下垂体に出血をおこすために起こる脳卒中)により生命に危険を及ぼす結果となりかねません。
 したがって下垂体腫瘍がある場合には薬の服用を続けていくべきだと考えられますが、高プロラクチン血症治療に用いる薬剤の胎児に対する催奇形性については現在は問題ないと考えられていますからあまり心配することはないと思います。

 なお、出産の経験がある人では、プロラクチン値が正常範囲にあっても乳汁が出る場合がありますが、この場合は生理が順調にあるか、もしくは基礎体温上で二相性を示しているものであればまず心配することはありません。
 このまま様子を見ていて良い場合がほとんどだと考えて良いでしょう。
 ただし、万が一乳汁に血が混じっていたり、母乳とは違う分泌物だと感じた場合には、必ず病院を受診するようにして下さい。

 

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