生理痛がひどいという場合、病的な場合とそうでない場合とがあります。
病的な場合としては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、骨盤内腹膜炎、子宮発育不全などが考えられます。このうち、最も頻度が高いものはやはり子宮内膜症でしょう。各疾患についての詳細は以下の関連するリンクを参考にしてください。
■関連するリンク
子宮内膜症ってどういう病気ですか?
FAQ・子宮内膜症編
FAQ・子宮筋腫に関するもの編
子宮筋腫と子宮腺筋症との違いは?
骨盤内腹膜炎についての解説はこちらを参考にして下さい。
病的でない場合というのは、子宮が収縮すること自体による痛み、内子宮口という子宮の出口部分にあたる場所が開くことによって起こる痛み、子宮近辺にある血管から起こる痛みなどであると考えられていますが、しかしその原因を特定して治療するというのはなかなか容易なことではありません。また、これらの痛みは加齢とともに、あるいは出産を契機として軽快してしまうことも多いものです。
したがって、診察で「異常なし」(=病的なものではない)との判断があった場合には、現在のところ鎮痛剤の内服(あるいは坐薬の使用)で痛みを抑えるという方法が最もポピュラーでしょう。「鎮痛剤ばかり飲んでいて大丈夫なのですか?」という質問を良く受けますが、例えば続けて飲んでいると次第に効かなくなるとか、妊娠しにくい状態になりやすいとか、あるいは身体に良くないなどという心配はまずないと思って良いでしょう。
とはいえ、あくまでお薬ですからそれなりの副作用もありますし、必ず医師の指導の元に処方を受けるようにすること、また医師と相談の上、時々血液検査で健康状態をチェックすることは怠らないようにすべきです。
鎮痛剤が身体に合わない、鎮痛剤を服用することに抵抗があるなどの場合には、漢方薬やビタミン剤などを服用するという方法もあります。漢方薬は、配合の仕方や個人の状態などによって、いわゆる「合う・合わない」が顕著に現れる場合が多く、効果のある人にとってはそれこそ劇的に効くことがある一方、効果のない人にとってはどれだけ長期に服用しても効果がない場合も多いようです。通常良く処方されるものとしては、当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、温経湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桃核承気湯などが多いものと思います。
ビタミン剤では、ビタミンE剤が生理痛に有効といわれますが、骨盤内での血流うっ滞に起因するものでは比較的有効であると考えられますがそれ以外の原因による場合は無効である場合が多いようです。同様のものとしてビタミンB群の配合剤が挙げられます。
さて、では他に治療法はないのか?となると・・・一番即効性があり比較的長期に渡って使用でき、また安全性に関しても比較的心配のいらないのが低用量ピルでしょう。
以前から月経痛の原因として、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの分泌不均衡が指摘されており、これが原因となって子宮収縮自体による痛みや骨盤内の血流うっ滞による痛みが発生することが知られていました。このような、いわば機能性の月経痛に対しては、排卵を抑制したりホルモン投与で不均衡を改善したりすることが有効であることが指摘されており、これがピル内服によって月経痛が改善する理由であるとも考えられていました。
しかし、なにせ中・高容量ピルには様々な副作用があり、特に体重増加という忌まわしい副作用があるために、確実な避妊を求める人以外にはあまり処方されていなかったのは周知の通りです。しかし、低用量ピルは卵胞ホルモン量を中容量ピルに対して約3分の2程度に抑えてあること、にも拘わらずほぼ100%の排卵抑制効果を示すことにより、体重増加などの副作用が少ないままに確実に月経痛を緩和する作用を持つことが知られています。
低用量ピルは服用上の注意をきちんと守っている限りは安全な薬であることがアメリカでの長期に渡る服用に関するデータの集積から証明されています。日本ではまだまだ認知度も低く、かつ許認可する上でも避妊薬としての面が第一に取り上げられて論議されたりしたこともあって、「ピルを服用すること」自体に抵抗感のある方も多いようですね。しかし、生理痛に対する有効性は確かなものですから、治療法の一つとして選択肢に入れておくべきものであることには間違いがないことは知っておくべきでしょう。
低用量ピルに関しては「ピルの効能と副作用について」「低用量ピルについて」にも服用に関する記載があります。服用を考える場合にはこちらもご一読しておいて下さい。
病的なものか、そうでないのかは診察を受けてみないとわかりません。
もしも病的な原因が見つかった場合には、いずれの疾患であってもまず将来妊娠をする上で障害となりうると考えて良いものですから、発見が遅れたために子供が持てなくなるというようなことがないようになるべく早めに一度診察を受けておきたいものです。
内診が怖くて産婦人科へ行けないというのであれば、「内診はイヤです」と訴えればいいと思います。もしくは、まだ経験がないから、と言えば、内診はせずに(場合によっては直腸診で診察をすることがありますが)診ていただけるものと思います。
ただし、診断をつけるということにおいては内診というのは非常に重要な役割を占めているものであることを知っておいて下さい。(つまり、内診をしないと診断を下せない場合もありうるのだということです)
病院を怖がって行かないでいたために結果として子供を産まないうちに子宮を全摘出しなければならなくなってしまった、という人も少なからずいらっしゃいます。薬を飲んでもなかなか生理痛がおさまらないという人は、すぐにでも診察を受けるようにして欲しいと思います。
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