レディースホームFAQG.子宮筋腫に関するもの編

5.子宮腺筋症と子宮筋腫の違いは?

 

 下のイラストを参照しながらお読みください。

 子宮筋腫というのは、良性の腫瘍です。
 腫瘍というものの定義は、身体に存在する細胞あるいは組織が自律的に過剰増殖したものとされますが、要するに勝手にどんどんと増殖をして大きくなっていくものと捉えてもらえば良いと思います。このうち良性腫瘍とは、大まかに言えば命の危険は少ないもの、と考えれば良いでしょう。
 さて、子宮筋腫というものは、子宮の筋層に生じてくる良性の腫瘍ということになりますが、本来は子宮筋というのは子宮全体を収縮させるために働くものであるのに対し、筋腫はただの筋肉の固まりですからかえって収縮の邪魔になるものであり、この結果、生理の出血が増える、あるいは生理痛がひどくなるなどの症状として現れてくるようになります。このような筋腫の固まりのことを「筋腫核」と呼びます。
 ところで、子宮筋腫は女性ホルモンのうち、エストロゲン(卵胞ホルモン)に依存して成長すると言われています。ということは、性成熟期にある(10代から50代くらい)女性では筋腫は常に大きくなる可能性がある、ということを意味し、また同時に、更年期を過ぎてホルモンが少なくなってくると筋腫の育つ可能性は少なくなってくるということも意味するわけです。(これに関してはこちらも参照して下さい)   

 一方、子宮腺筋症というのは、子宮内膜症によって起こる疾患です。
 子宮内膜症というのは、本来子宮の内側を覆っている子宮内膜が、本来の場所以外に生育してくることにより起こる疾患ですが、このうち、内膜の生育が子宮筋層に限局したものを、子宮腺筋症と呼びます。
 子宮腺筋症では、子宮内膜が子宮筋層内に生育しているために、生理の時期になると子宮筋層内で内膜がはがれて出血を起こすことになります。これが生理痛の生じる原因になるものです。また、内膜部分の混在により筋層の肥大化を起こしますから、子宮全体の大きさも大きくなり、このため子宮筋腫との鑑別が難しくなります。
 子宮自体の肥大化はまた、生理の量が増量する原因ともなりますので、結果的に子宮筋腫によって起こる症状とほぼ同じ症状・・・つまり、生理痛がひどくなり、生理の量が増量する、生理以外でもお腹や腰が痛む、などといった症状が現れてくることになります。
 つまり、子宮腺筋症と子宮筋腫は、症状も他覚的所見も非常に似通っているわけでして、さらにこの両者は良く合併することが知られている(30〜40%)ため、明確に区別をしなくてもさほど支障がないというのが本当のところなのです。

 

 
 

     

 さて、子宮内膜症は子宮内膜が増殖しないようにすると悪化しないことがわかっており、内膜が増殖しないような状態、すなわち妊娠中ないしは更年期を過ぎた状態になると、病気の進行が停止するか、あるいはだんだん軽快してくることがわかっています。
 よって、子宮腺筋症の治療も、基本的には妊娠したような状態に持っていくか、あるいは更年期を過ぎた状態に持っていくようにすることが基本となりますが、このうちの後者はエストロゲンを減少させると軽快するという点で、子宮筋腫と同じ治療法になるということがわかります。
 つまり、治療においても両者は同様であるというわけですから、医者側にとっては疾患の説明をする場合に筋腫として説明し治療をしたとしても何ら支障がないわけです。
 これが、腺筋症についての説明があまりされない、筋腫と同じ様な病気です、とだけしか説明されないという現状の不満の声の裏側にある理由と言えるものなのかもしれません。   

 子宮筋腫と子宮腺筋症は、発生原因はまったく異なるものの、症状として現れるもの、他覚的所見や検査所見、治療法という面ではほとんど同じ疾患と言えるものであり、しかも両者は良く合併することから、あまりきちんとした区別をなされないまま治療がなされているのが現状ですから、治療を受ける側としてもあまりどちらなのかにはこだわらなくても良いものなのかもしれませんね。