日本産婦人科学会では、自然流産を3回以上繰り返す場合を習慣性流産と定義しています。
自然流産というのは全妊娠のうちのおよそ1割を占めており、その割合からいえばそれほど珍しいものではありませんが、3回以上続けて流産となるとさすがに病的なものと考えた方が良い、ということでしょう。
さて、習慣性流産の原因となるものにはどんなものがあるかといいますと、大きく分けて
1)子宮に異常がある場合
2)内分泌異常がある場合
3)感染症による場合
4)自己免疫異常による場合
5)夫婦の染色体に問題がある場合
6)原因不明
というようになります。
1)には、子宮の奇形(双角子宮、重複子宮など)、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腔癒着症、頸管無力症など、2)には甲状腺機能異常、糖尿病など、3)には梅毒やB群溶連菌感染などが含まれますが、いずれにしても手術療法や薬物療法で対処することになります。各対処法に関しての詳細はここでは記述しきれませんので、該当する方は担当の医師に直接伺って下さい。
4)の自己免疫疾患についても流産しやすいことが知られています。特にSLEや抗リン脂質抗体症候群などは、臨床症状に乏しく検査して初めてわかる場合も珍しくないため、検査を受けておく必要のあるものでしょう。抗リン脂質抗体検査(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなど)に関しては保険適応外のため高額になりますが、自己免疫関連の検査(抗核抗体、抗DNA抗体、血清補体価など)や血液凝固関連の検査についてはおおむね保険適応となりますのであまり高額にはならないでしょう。
5)についても、夫婦どちらかに染色体異常がある場合に習慣性流産となりやすいことが知られています。他に原因が考えられない場合には高額ではありますが染色体検査を受けてみる必要性はあるかもしれません。
なお最近、主要組織適合抗原系(HLA)の類似性が高い場合にも流産しやすいことが判明してきました。主要組織適合抗原系は臓器移植における移植片拒絶反応として知られているもので、自己と非自己を判別する働きを持つ遺伝子領域のことを指します。臓器移植する上では臓器提供者と臓器受託者との間で組織適合抗原系の類似性が高いほど移植片に対する拒絶反応が少ないことが知られていますが、こと妊娠に関しては組織適合抗原系の類似性が高いほど流産しやすいといわれています。
これに対する検査(HLAタイピングといいます)は保険外であるためかなり高額ですが、他に原因が考えられない場合には検査を受けてみる必要性があるかもしれません。
なお、主要組織適合抗原系の類似性が高い場合には、ご主人のリンパ球を皮下注射するリンパ球免疫療法という方法で治療を行うのが一般的であるようですが、この治療法もまだ確立されたものではなく治療を行える施設も限られているため、希望のある方は受診しようと思う施設へ連絡して確認を取るようにしてみて下さい。
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