子宮内膜症の本態は、本来あるべき場所ではないところに子宮内膜が生育しているところにあります。そして、その異所性に生育した内膜が、ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の影響を受けて毎月増殖し、生理の時期になると剥がれ落ちて出血をすることにより生理痛の悪化などの種々の症状を引き起こすところに疾患の本質があります。
したがって、子宮内膜症の治療というのは、
・病変の完全除去
・内膜の増殖の抑制
が治療する上での目標となるわけですが・・・
例えば手術によって可能な限りの病変を除去したとしても、肉眼では見えない病変を残してしまう可能性はかなり高く、また手術とともに2)の内膜増殖の抑制を目的として投薬を行ったとしても、やはり病変の完全除去ということは不可能に近いものといえます。
このため、投薬治療を終了してホルモンの分泌状態が元のように回復すると、再び残存した子宮内膜症病変も増殖・出血を繰り返すようになり、再び病変が拡大し悪化していくことになります。
このような理由から、子宮内膜症は再発を繰り返しやすい疾患といえるでしょう。
さてそうすると、子宮内膜症という疾患の本質を考えればずっと生理を止め続けていれば悪化しないではないかということになりますが、しかし生理を止め続けるということは若いうちから更年期状態を作り出すことに他ならず、骨粗鬆症を始め様々な更年期障害を生み出すことを考えると決して望ましいことは言えません。
また、妊娠を希望されている方の場合には、内膜増殖を抑制することイコール排卵を抑えるということですから、まったく正反対の方向に向かうことになります。
また一方、妊娠したのと似たような状態として治療する方法、すなわちピルを用いる方法(擬妊娠療法)では、擬閉経療法(更年期状態を作り出すことで治療する方法)とは異なり較的長期に渡って治療しても骨粗鬆症を始めとする副作用を心配する度合いは少なくてすむという利点はありますが、そのかわりに血栓症や肝機能障害などの副作用を招く心配はありますしやはり治療期間中は妊娠が望めないという点が問題といえるでしょう。
以上のことを要約すれば、
・内膜症の治療を優先すれば、更年期症状の問題と妊娠できないという問題が起こってくる
・妊娠を優先する、あるいは正常のホルモン状態にあることを優先するとなると、子宮内膜症が悪化ないしは再発する可能性が起こってくる
ということになるわけです。
子宮内膜症と診断し治療を行おうという時点で最も頭を悩めるのはこのどちらを優先すべきか、ということに他ならず、これが子宮内膜症は再発しやすい疾患であること、生理が来るたびに病状が少しずつ悪化していくこととあわせて、子宮内膜症の治療を難しくしている原因であるとも言えるでしょう。
「子宮内膜症ってどういう病気ですか?」にも治療法の詳細があります。
こちらの記載も参考にしてください。
|