レディースホームFAQG.子宮筋腫に関するもの編

1.筋腫は手術しなくちゃいけないの?

 

   筋腫は必ずしも手術をしなければならないものではありません。条件を満たしさえすれば、手術をせずにそのままお墓の中へ持っていっても良い(笑)ものです。
 では、どういう条件を満たせば手術を考えなくても良いのか?
 それについてお話をいたしましょう。
 ただし、以下の記述は妊娠を考慮したものではありません。
 妊娠と筋腫に関係したことを知りたい場合にはこちらに記述してありますのでご参考にして下さい。

 

 

  A.筋腫の大きさ

 子宮筋腫ができると、子宮全体の大きさが大きくなってきます。
 通常、筋腫の大きさは慣例として子宮全体がどのくらいの大きさになっているかという観点から表現することが多く、この表現に従えば、一般的には手拳大以上の大きさになったら(子宮全体の長さでいえば10センチ以上)、手術が必要であると考えられています。
 正常の子宮の大きさは、サイズでいえば鶏の卵の大きさ(鶏卵大と言います)くらいのもので、長さは7センチ前後、厚みは3〜4センチというのが標準でしょう。
 子宮は陣痛を起こしたり生理の出血を抑えたりするために収縮を起こす必要があるため、平滑筋による筋肉の層(子宮筋層)が存在しますが、この平滑筋層に勝手にできあがる筋肉の固まりが子宮筋腫というものです。筋腫自体は良性の腫瘍ですから、この固まりが勝手にどんどんと大きくなっていくだけで転移を起こしたり臓器を浸食して絶命に至るなどのいわゆる悪性腫瘍的な性格は持ち合わせてはおらず、そのため障害が起こらない限りは手術をせずに様子を見ていても良いのでは、という考え方が出てくるわけです。

 
 

 

 さて、筋腫の大きさは通常子宮全体の大きさとして表現をすると言いましたが、CTや超音波、MRIなどの進歩により筋腫の固まり(筋腫核といいます)の大きさを正確に表すことができるようになってきたため、混同することが多くなってきているようです。
 大きさ何センチ、と言われた場合、それが子宮全体の大きさを言っているものなのか、それとも筋腫核の大きさを言っているものなのかをまず確認しておくようにしましょう。   

 大きさが何を表現しているものなのかを確認した上で、もう一度子宮筋腫を手術する必要がある大きさを確認すると、「子宮全体の大きさとして」手拳大以上。子宮全体の長さから言えば10センチ以上、です。  

 では筋腫核の大きさとしてはどのくらいが目安になるのでしょうか。
 これはある程度の基準があるわけではなく、むしろ他の症状や筋腫核のできている場所との兼ね合いで決定するべきものなのでしょうが、おおよそ直径5センチほどを目安とするのが普通ではないかと思います。これ以上の大きさになると、貧血なり腹痛なりの症状として現れてくることが多いというのがその理由です。

 

   

 B.貧血の程度

 子宮筋腫が大きくなってくると、経血量の増量という自覚があるなしに関わらず、貧血を起こして来ることが多くなってきます。
 ここでいう貧血とは、めまいがするとか立ちくらみがするなどの症状として現れるものではなく、血液検査により血色素量を測定して初めてわかるものを指します。血色素量というのは血液が酸素を運搬する能力を示すようなもので、子宮筋腫ではたいてい経血量が増量することにより鉄分不足を生じ、そのために血色素量が減少して貧血を起こすようになります。
 このように鉄分が不足することにより起こる貧血を鉄欠乏性貧血といいます。
 血色素量は、通常は12.0g/dl以上あるのが普通です。
 女性だということを考えても、11.5g/dl以上あるのが普通と考えるべきでしょう。
 血色素量が減少してくると、赤血球数も減少して酸素の運搬に支障が出てくるわけですから、疲れやすい、息切れしやすいなどの症状として現れてくるようになります。さらにひどくなると、動悸を感じたり動くこと自体が辛くなってきたりして、最悪の場合には命に関わってくることになります。
 また、自覚的な症状があまりなくても、心臓は身体の酸素不足に敏感に反応して血液の拍出を増やそうとしますから、結果として心臓にも負担がかかることになります。
 このように、たとえ症状がなくてもただの貧血と軽く考えていると、取り返しのつかないことにもなりかねませんので注意をして下さい。   

 血色素量で言えば、10.0g/dl以下に下がっている場合には手術を考えた方が良いと考えられています。また、鉄剤の内服や輸血などで治療することによって一時的に貧血が軽快しても、すぐにまた貧血が起こってくる場合にはやはり手術を考慮すべきでしょう。
 

 

 

 C.症状  

 子宮筋腫による主な症状は、B.で述べた貧血により起こる症状の他に、腰痛、下腹部痛、性交痛、頻尿や排尿障害(出にくい、キレが悪い、など)、便通の異常、不正出血などです。これらの症状が生活する上で差し支えがあると考えられる程度のものであれば、やはり手術を考慮すべきと考えられます。
 

 

 

 D.更年期との兼ね合い  

 子宮筋腫はエストロゲン(卵胞ホルモン)に依存して腫大すると言われています。
 従って、性成熟期にある女性(生理が来ている年代にある女性、すなわち10代後半から50代前半の女性)では、エストロゲンの分泌が活発であるため筋腫は常に育っていく可能性があると考えられるわけです。
 ところが、更年期を過ぎてしまうと卵巣の働きは鈍り、エストロゲンの分泌も衰えて来ますので、筋腫もそれにあわせて発育しなくなってくる可能性があります。
 従って、更年期近くの年齢にある場合には、筋腫の大きさと症状などを考慮して手術をせずに経過観察とする場合もあります。この時、リュープリンやスプレキュアなどの投薬によって一時的にエストロゲンを抑える治療をすることで、投薬中だけでも筋腫が大きくならないように考慮した治療法を選択する場合もあります。これは俗称、「逃げ込み療法」と呼ばれています。更年期へ逃げ込んで筋腫が大きくならなくなるのを待つことで、手術をしなくても良いように考慮する、という方法ですね。
 ただし誤解が無いようにして欲しいのですが、これらの薬剤を使ってエストロゲンを抑えることにより、筋腫はかなり縮小する場合が多く見られるのですが、薬の使用を終えて生理が再開してくると再び筋腫は腫大しておよそ半年くらいの間にまた元の大きさに戻ってしまう場合がほとんどである、ということを理解しておいて下さい。
 筋腫は薬だけで根治的に治療することはできないのです。
  

 

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