1.卵巣が腫れていると言われましたが? |
「卵巣が腫れている」といわれた場合、おおまかに以下のような原因が考えられます。
以上の鑑別に関してお話をします。 一般的には内診と超音波検査で「卵巣が腫れている」と言われることが多いと思いますが、この段階ではまだおおよその予想はついても「これ」と診断できることは少ないかもしれません。したがってこれを鑑別していかなくてはならないわけですが、この時通常「卵巣マーカー」というものを採血して調べるのが普通です。これを見ることでまず、腫瘍性のものか、悪性のものでないか、子宮内膜症によるものではないか、などを判断することができます。同時に、卵管や卵巣などで炎症を起こした経歴が疑わしい場合には、炎症反応に関しても検査をすることができます。(CRPを検査し、陽性かどうかを見ます) 以上のような検査を経ておおまかにこれから先の治療方針が決められるようになります。 2.の「ホルモンの影響」が考えられる場合には、自然に経過を見て良いのですが、それ以外の場合には何らかの治療が必要になると思った方が良いでしょう。 まず1.の腫瘍が疑われる場合ですが、悪性のものでも良性のものでも治療は基本的には手術摘出となります。腫瘍性のものであれば放置しても小さくなることはなくどんどんと大きくなる一方ですし、大きさが大きい場合は茎捻転を起こしてひどい痛みに苛まされる可能性もありますから手術は必至だと考えた方が良いでしょう。 3.の「炎症によって膿瘍ができた」場合でも、治療の基本は手術摘出です。この場合は「膿み」が袋状になって貯留しているのでこれを摘出しますが、同時にたいていはその周囲に癒着があるのでこれを剥離すること、必要によっては卵管を(たいがいは卵管が巻き込まれていますから)癒着剥離したあとさらに形成術を行うことになります。さらに、膿の部分から原因菌の培養検査をしますが、炎症が落ち着いてしまっていると菌が同定できない場合も多いようです。 4.の子宮内膜症の場合には、中味はどろっとした血液成分が主体となりますが、この液体成分の性状によって手術が必要となるか、あるいは投薬治療でも良いかがおおまかに判断が可能となります。性状がタール状であればあるほど手術を必要とするようになりますが、液状であれば投薬治療により身体に吸収されて消失してしまう可能性が高くなります。(「チョコレート嚢腫ってなんですか?」参照) 5.の副卵巣嚢腫というのは、卵巣にできるものではなくて卵管と卵巣の間にある卵管間膜という部分にできるもので、胎生期の発生段階での名残りである卵巣上体(副卵巣)という部分にできる水ぶくれのようなものです。臨床的には卵巣嚢腫として手術を受け、術中に初めてそれと診断されることが多く、術前から診断されることは少ないものです。 手術に関しては、開腹手術と腹腔鏡による手術とがあります。
■関連するリンク
|