レディースホームFAQS.手術に関するもの編

1.円錐切除術とはどういう手術ですか?

 

 円錐切除術 Conization というのは、通常子宮頚部の前癌病変ないしは頸癌初期病変に対し行われる手術です。難治性のびらんに対して行われることもありますがまれで、まずは上記疾患に対して行われるものと考えて良いでしょう。
 子宮頚部における前癌病変ないしは頸癌初期病変の診断については別項(「子宮がん検診について」)に記載がありますが、細胞診により異常を指摘され精密検査(コルポ診&狙い組織診)を行った結果、高度異形成以上の病変が推測された場合には、通常手術治療が採択されます。この時、推測される病変が子宮頸癌Ia期までであれば、他の臓器組織への転移の可能性は100%ないと報告されていますから、病変部分だけの切除で十分と考えられ、よって単純子宮全摘術ないしは円錐切除術を選択することになります。勿論、これから妊娠出産を希望する方の場合は後者を選択することになります。
 また、円錐切除術により摘除した組織片を詳しく調べることにより正確な診断を得ることができるので、治療を目的とするだけではなく確定診断を行うことを目的としても行われるものであることもこの術式の特徴とも言えます。

 さて、では円錐切除術についてを説明いたしましょう。
 下のイラストは、円錐切除術における切開線と切除する範囲を示したものです。

 

 

 イラストに示した通り、びらんの周囲を輪状に切開し、頸管に向かって円錐形に切開を入れて子宮頚部を切除する、というのがこの手術の術式になります。切開には通常のメスのほか、電気メスやレーザーなどを用いることもあり、電気メスやレーザーでは出血量をおさえる効果が期待できます。
 円錐切除後の子宮口の縫合は、通常ストルムドルフ Strumdorf 縫合という縫合法により縫合します。
 この縫合法により止血とともに子宮膣部の再建を行うわけですが、この手術法を下のイラストに掲載しておきましたので、参考にして下さい。

 いっぽう、摘出した組織は組織検査にて詳しく調べることになりますが、下のイラストのように切開して組織標本として切り出します。この操作は子宮膣部を12方向に切り出して、すべての方向について(1時〜12時方向と呼び分けます)検査をするのが普通です。
 こうして全方向について病変を調べ、最終的診断を下すことになります。
 上記のように切り出した組織片において、正常部分から上皮内癌部分へと移行している部分の顕微鏡下組織を参考として下に示しました。通常はこのようにクリアカットに分かれるわけではなく、正常上皮→軽度〜高度異形成→上皮内癌というように、間に移行段階をはさむことが多いのですが、わかりやすい例として示してありますのでご了承下さい。

 では最後に、円錐切除後の注意点についてお話ししましょう。

 まず術創の治癒に要する期間ですが、およそ1〜1.5ヶ月と考えて良いでしょう。通常 Strumdorf 縫合には吸収糸を用いますが、糸が溶けている間には出血が起こる可能性があると考えて良く、したがって術後およそ1ヶ月半以上経過するまではおりものに血が混じっても不思議はないと考えて良いです。
 術創から大量に出血が起こる可能性があるのは術後約7日以内だと思って良いため、入院期間はだいたい7〜10日前後であることが多いようです。退院後は次の受診までは軽度の労作のみを許可され「身体を無理しないように」言い渡されることが多く、またシャンプーシャワーは良いが入浴は禁止されることが多いようです。
 性行為は術創がある程度治癒するまではもちろん禁止されます。この期間は前述のようにだいたい術後1ヶ月半くらいまでと考えると良いでしょう。 ただし、しばらくの間は性行為後に出血することがあるものと思いますので念頭においておくと良いと思います。

 なお、この手術を行ったあとに妊娠を考える場合ですが、まずきちんと検診を受けて医師から妊娠しても良いという許可が下りてから妊娠するように心がけて下さい。また、妊娠した場合には頸管無力症をきたしやすく、場合によっては頸管縫宿術が必要となることも知っておくと良いでしょう。

 

■関連するリンク
  子宮がん検診について教えて下さい
  頸管無力症ってどういう病気ですか?