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2.びらんってどういうもの?

 

 まず、子宮の出口にある「びらん」は病気ではありませんので、最初にそれをきちんと認識しましょう。  
 子宮の出口の部分(膣の中に顔を覗かせている部分:子宮膣部と言います)には、表面を覆っている組織がありまして、体表で言えば皮膚にあたるものになりますが、これを上皮と言います。子宮膣部の上皮には、膣壁から連続して子宮膣部を覆っている扁平上皮と、子宮の内膜へ続いていく腺上皮とがあります。この両上皮の境界部分を扁平ー円柱接合部(SCジャンクション)と言いますが、これについては後述します。
 さて、膣の方から子宮の出口を観察すると、生理の出血の出てくる穴の周囲に腺上皮が見え、さらにその周囲は膣壁へ連続する扁平上皮が見える形になるのですが、腺上皮に覆われた部分は周りの扁平上皮に比べると、赤くただれたように見えます。これは、扁平上皮では細胞が何層にも重積しているのに対して腺上皮では一層の腺細胞が並んでいるだけなので、その下の皮下組織内にある血管が透過されて見えるからなのです。
 そして、ただれたように見えるから、ここを「びらん」と呼ぶのです。

 

左の写真は膣の中の一番奥、子宮口の部分です。
中央の凹み部分、生理の出血の出てくる穴の周囲にオレンジ色に見えている部分がびらんの部分です。
周囲の扁平上皮と違い、上皮が一層の腺細胞 で覆われているため下の皮下組織内の血管が透過して見えるため、このように見えます。

上のイラストで、青い→部分の方から見たものが左の写真になります。下のイラストは写真を解説したものになります。

 ところが一般的にびらんというのは、例えばやけどで皮膚がめくれてしまったような状態や、酒の飲み過ぎや精神的なストレスのために胃の粘膜が欠損してしまったような状態のことを指すものです。つまり、皮膚や粘膜を含めて上皮が欠損した状態をびらんと呼ぶのですが、子宮の出口のびらんについては前述のように、上皮が欠損している訳ではなくて、「そう見える」という理由でそのように呼ばれているものなのです。
 ここが、通常の「びらん」との大きな違いになります。
 このような理由から、前者のように上皮が欠落した状態を真性びらん、子宮膣部のように上皮は欠落していないがそのように見えるものを仮性びらん、と呼んで区別をするようにしています。  

 さて、以上のことから子宮膣部の「びらん」は病気ではないということがご理解いただけたでしょうか?

 では、いったいなぜびらんびらんと騒ぐのでしょうか?
 その答えは先述したSCジャンクションにあります。    

 子宮癌(子宮頚癌)というのはこのSCジャンクションにある予備細胞(reserve cell)という細胞から発生することがわかっているのですが、予備細胞から子宮頸癌が発生したとしても、前癌状態あるいはごく初期の浸潤癌の状態というのは非常にびらんに酷似した病変であるため、肉眼的にはまったくこの「びらん」とは区別が付かないのです。
 つまり、びらんがあるということはその中に子宮頸癌の初期病変が隠れている可能性もあるということになるわけで、こういう理由から産婦人科のお医者さんはびらんがあるから子宮癌の検査をしましょう、とおっしゃるのです。
 おわかりでしょうか。
 そして、お医者さん側の意識としては、癌の検査をして異常がなかった場合には、びらんは「正常の女性なら誰にでもあるもの」というように変わっていきます。さらにその時点から、びらんは「病気ではないので治療しなくても良いもの」という意識に変わってしまうので、あまり詳しい説明がなされなくなってしまう場合が多いのです。
 「異常ではないから心配ない」という説明だけになるわけですね。
 実際びらんは月経がある女性なら小学生から年輩の方まで誰でも持っているものですし、病気ではないこと、治療が必要なものではないことも事実といえば事実です。  

 しかし、びらんがあるが故に不快な症状が起こることがあるのもまた事実です。
 びらんというのは最初にお話ししましたように、腺上皮という上皮で覆われています。腺上皮というのは粘液を産生する細胞が並んでいるものですから、びらんの面積が広いほど粘液が多く出るということにつながります。つまり、「透明なおりものが多い」原因となるわけです。
 また腺上皮という上皮は外的刺激により容易に剥脱して出血を起こしやすいため、例えばセックスで亀頭が接触することや、膣炎による炎症が波及することなどによって、簡単に剥脱して出血を起こすという性質もあります。
 このような、びらんがあるために起こる不快な症状に対しては、もちろん治療を施すべきでしょう。

 で、治療ですが、レーザー、炭酸ガス、液体窒素、高周波電気など、いろいろ種類はありますが、要はびらんの部分、すなわち腺組織の部分の細胞を壊死させてしまうことにあります。すると、この部分は治癒していく段階で今度は扁平上皮によって覆われるようになり、その結果びらんが縮小したような形になって治癒することになります。
 治療した日から完全に治癒するまではおよそ1カ月はかかり、その間は子宮膣部はいうなればやけどをしてそれが治っていく時と同じ経過をたどるわけですから、水っぽいおりものが増え、時々出血が混じるということが起こるのが普通でしょう。
 でも、1カ月以上経つとかなりきれいになるはずです。
 これで完治したよバンザイ、といきたいところなんですが、しかし。
 実はびらんの大きさというのはエストロゲン量によって決まるもので、エストロゲンの分泌が正常な状態にあるうちは(つまり、正常に生理が来ている間は)いずれまたびらんは元の大きさに戻る可能性が高いのです。
 つまり、閉経するまではびらんは、治療をしてもまた元に戻る可能性が常にあるのだということになります。  

 とはいえ、びらんは決しておりものを増やして不快な症状を起こすばかりのものではなく、もちろんちゃんとした存在理由があるものですよ。
 それは・・・
 排卵の時に粘液量を増やすことにより、精子が子宮の中に入りやすくなるような環境を整えるという働きです。妊娠がうまく成立するように備わっている、自然の力だと考えて良いのでしょうね。