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5.子宮がん検診について

 

 子宮ガン検診について、できるだけわかりやすくお話しましょう。

 一般的に「子宮ガン検診」と言われるものには、子宮頸部細胞診と子宮体部細胞診の2種類があり、このうち最も一般的に行われているのは前者の子宮頸部細胞診の方です。
 子宮ガンには子宮頸癌と子宮体癌がありますが、発生率は7:3と圧倒的に子宮頸癌の方が多く、このため通常は子宮頸癌に対しての子宮頸部細胞診のことを「子宮ガン検診」と称する場合が多いようです。ちなみに、これらの検査によって何らかの異常があること(癌を含めて)を発見できる率は、頸部細胞診で90%、体部細胞診で70%ほどだと考えて良いでしょう。

 さて、では細胞診についてお話を進めますが・・・
ここでは頸部細胞診だけについて解説することにします。
なお、ローマ数字の表記はWeb上ではうまくいかないので常用数字で表記いたします。
(クラスなんとかという部分です)

 子宮頸部細胞診は、子宮頸部(膣の中に顔を出している子宮の出口の部分)から細胞をこすり取ってきて、プレパラートに塗りつけたあと固定・染色し顕微鏡で見て判断するものです。
 検査をしてからから結果が出るまでは、通常1週間以上かかるものと思います。検査自体はほとんど痛みを伴いませんし数秒で終わってしまう検査で、非侵襲的なものです。決して怖がるような検査ではありません。
 結果の評価はクラス1から5までの5段階に分け、異常なしと考えて良いのはクラス1と2です。1と2との違いは、全く細胞に異常はなく炎症等も認められないものがクラス1、細胞に異常はないが炎症所見を認めたり、ホルモンの影響によると考えられる異常所見を認めたりした場合にはクラス2と判定されます。
 結果として最も多いのはクラス2なのですが、クラス1よりもクラス2の方が多いということは、案外膣の中ってきれいな状態にあるわけじゃないんだということですよね。
 クラス3以上は、細胞に異常所見ありということを意味し、精密検査が必要となります。
精 密検査というのは「コルポ診」と「ねらい組織診」のことで、これについての詳細はここでは割愛させていただきますが、これらの検査結果を総合してどの程度の病変があるかを診断します。クラス3はaとbとに分けられ、いずれも異型細胞を認めることを意味しますが、aよりbの方が程度が悪い可能性があるということを意味します。とはいえ、クラス3では子宮頸部異形成が最も疑われる病変なのであって、決して浸潤癌を疑うものではありません。
 クラス4は、ごく初期のガン細胞を認めるが主体は異型細胞であることを意味し、子宮頸部の異形成ないしは上皮内癌が存在する可能性を意味します。
 クラス5ではガン細胞が主体に見られることを意味し、上皮内癌あるいは浸潤癌が存在する可能性があることを意味します。

 最後に、子宮頸部の前癌病変(と癌病変)についてを簡単にお話しします。
 子宮頸部には「上皮」という、皮膚のように子宮頸部を覆っている組織が存在しますが、この上皮内に異型細胞が出現してきた状態を子宮頸部異形成と言います。異型細胞が出現する程度によって、軽度・中等度・高度の3段階に分けられます。
 軽度・中等度の異形成では、経過観察をしていくと正常の上皮に戻ってしまうケースがかなり多く見られ(80〜90%)、従ってこのケースでは経過観察&定期的細胞診検査で良いと言われています。これに対し、高度異形成では正常に戻るケースも認められるが(60〜80%)癌へ移行するケースも少なからず認められるため(20〜40%)、特別な場合を除いて手術治療を行うべきであると考えられています。
 高度異形成からさらに悪化すると、上皮内にガン細胞が出現する段階となりますが、上皮内にガン細胞が限局している場合には「上皮内癌」、上皮から皮下組織内へ癌が進展して来た場合に「浸潤癌(いわゆる子宮頸癌)」と表現されます。細胞診でクラス3ないしは4である場合に子宮頸部異形成が疑われるわけですが、クラス3aでは軽度ないしは中等度異形成が、クラス3b、4では高度異形成ないしは上皮内癌が存在することが疑われる、という意味が含まれています。クラス4ではごく初期の浸潤癌を疑う場合もあり、クラス5とあわせて癌の浸潤の程度を確実に予測することが大事なこととなってきます。

 以上が、子宮頸部細胞診に関する概要です。

 最後に、コルポスコープによってどのように見えるかをお見せしましょう。
 下の写真がそうですが・・・通常薄めた酢酸液を塗布して観察します。
 一番左は子宮口をそのまま拡大して見たもの、中央は同じ人で酢酸加工をした場合のもの(正常の人です)、そして一番右は酢酸加工をして病変が白く浮き出てきている状態を示したものです。病変部分がわかるでしょうか?