レディースホームFAQK.不妊症に関するもの編

2.不妊の検査ってどういうもの?

 

 なかなか子供ができないという場合、まず最初に調べる必要が出てくるのは、精子と卵がちゃんと出会えるかどうかについてでしょう。そのためには、精液の妊孕性(にんようせい)が正常に保たれていること、排卵がきちんとあること、そして受精の場である卵管の通過性に問題がないこと、の3点が第一の問題点となります。

 精子については、採精して精液を調べるだけで済みますし、この検査は不妊症を扱っている産婦人科、もしくは泌尿器科でも検査してもらえますので、早いうちに一度調べてもらっておくと良いと思います。
 精液の妊孕性に関しては精液の量、精子の数、濃度、運動精子の割合、精子奇形率、白血球の混在率などを見ることで判断するのが一般的です。正常値のおおまかな数字を下に記しておきます。

  精液量  2〜6ml        精子数 4000万以上
精子濃度 2000万/ml以上   精子奇形率 50%未満
運動精子の割合  前進する精子が50%以上

 なお、精子を検査する時には3〜7日の禁欲期間をおくこと、風邪などの感染症にかかっていない時期を選ぶこと、体調が思わしくない時を避けること、などを注意しましょう。また、精液は変動が大きいので一度の検査だけで判断せずに何度か検査を繰り返してみるべきものと考えておきましょう。

 卵については排卵のあるなしが第一の問題となります。
排卵がきちんとあるかどうか、いつ頃排卵が起こっているのかを知るためには、
 ・a 基礎体温の測定
 ・b 経膣式超音波断層法による卵胞のモニター
 ・c 血液検査(もしくは尿検査)によるエストロゲン量の測定
 ・d 頸管粘液検査
 ・e 尿中LH測定検査
などが中心的な検査法となります。

 

  まず基礎体温表を記録することによって、生理が始まった日から見て何日目あたりに排卵が起こっているかを推定します。排卵が無いようであれば排卵誘発を行って、同様に何日目あたりに排卵があるかを見ます。(基礎体温に関してはこちらに、排卵誘発に関してはこちらに記載があります)
 排卵が近いと思われる日の「あたり」をつけたら、その頃に経膣式超音波で卵胞径を測定し、排卵日を予測して性交指導を行います。場合によって、尿中(もしくは血中)のエストロゲン量の測定検査(排卵期にはエストロゲン量が急増するのでそれを排卵日予測の目安とするもの)、頸管粘液検査(排卵期の頸管粘液は増量して粘性に富み顕微鏡的にシダ様形成を見るので、それを観察するもの)や、尿中LH測定検査(LHカラーなど、尿中のLHを測定することで数日以内に排卵が起こるのを予測する検査法)なども補助診断法として用いることがあり、どの検査法を併用するかは個人にあわせて選択されているのが現状なのではないかと思います。

 もう一つ、卵管の通過性に関する検査法ですが、これに関しては
  1.子宮卵管造影法(HysteroSalpingoGraphy;HSG)
  2.通気検査法(Rubinテスト)

  が主に行われている検査法と言えるでしょう。
 1.は、子宮内へ造影剤を注入していき、レントゲンで造影剤の流れを見ることによって子宮の形状、卵管の疎通性、卵管周囲の癒着の有無などを判断する方法です。卵管の通過性を見る方法として最も一般的に行われている方法ですが、痛みを伴うことがほとんどであるという点が難点です。
 2.についてはそれほど一般的に行われている検査ではありませんが、炭酸ガスを注入して内圧の変化を見るために1.よりも卵管の機能的な側面を診断できること、1.に比べて痛みが少ないという利点があります。しかし同時に確実性に欠ける、障害部位の判定が難しいなどの欠点も持ち合わせています。
 卵管造影検査の所見について、模式図で説明しましたので参考にしてください。

 

     

 以上、まずは精子・卵・卵管について問題がないかどうかの検査を行い、性交のタイミングを指導する、というのが第一段階であるといえるでしょう。

 これでなかなか妊娠に至らない場合には、次の段階としてまずはヒューナーテストが考えられます。これは排卵期に性交後3時間以内に膣内・頸管粘液内・子宮内の精子の様子を観察するもので、子宮内へちゃんと精子が入り込んでいるかどうかを見る検査です。
 具体的には、排卵期に3日以上の禁欲期間をおいた上で性交を行い、3時間以内(3〜5時間以内という意見もあり。)に上記のように精子を観察して、頸管粘液による精子の通過障害が起こっていないかどうかを判定します。これでもしも頸管粘液における精子の通過に障害があれば、人工授精(AIH)の適応ということになります。
 このほかの検査法としては、子宮内膜組織診(妊卵の着床に障害がないかどうかを調べるもので、排卵後7日後に内膜組織を採取して検査するもの。痛みを伴うことが多い)、LH−RHテスト(間脳・脳下垂体の働きを見るためのもの)、甲状腺ホルモン測定、ACTH刺激試験、TRH試験などが追加されることがあります。

 精子との相性という意味で、もう一つ、免疫学的検査というものがあります。
 これは、女性側に精子に対しての特別な抗体(抗精子抗体)ができていないかどうかを検査するもので、血液検査によって調べることができます。特に問題となるのは精子不動化抗体といわれるもので、これについては不動化試験という試験を行うことで検出が可能となります。
 このほかにも、Swim up テストなど、免疫学的に精子との相性が悪くないかどうかを調べる試験がいくつか考案され実施されています。

 最後に、以上のような検査法を駆使しても原因が不明である場合に、ルーチーンに行われる検査法として大事なものがあります。
 それは腹腔鏡検査で、種々の検査法では検出不可能な原因の究明(卵管周囲癒着、子宮内膜症、卵巣におけるPCOなど)にも必須の検査であると言えます。もちろん腹腔鏡は検査法としてだけではなく、癒着剥離や内膜症病変のレーザー焼灼などという治療法としても大事なものであり、不妊症には不可欠な検査法と言えるものでしょう。

 なお、保険適応についてですが、だいたいの検査は保険が適応されます。
 しかし、抗精子抗体など一部の免疫学的検査などでは保険が適応されない場合も往々にしてありますので、こういった検査についてはその都度先生に確認しておいた方が良いかもしれません。