10.子宮外妊娠ついて教えて下さい |
1.概要
受精卵が、子宮内腔以外の場所に着床して発育することを子宮外妊娠と言います。 |
さて、妊娠は精子と卵子が合体する、いわゆる受精という現象から始まりますが、この受精という現象は卵管内(卵管膨大部)で起こるものであることがわかっています。受精をした卵(受精卵)は、およそ1週間をかけて卵管内を移動し子宮の内腔へたどり着きますが、その間にどんどん細胞分裂を繰り返しながら発育していき、子宮の内腔へたどり着く頃になってようやく胎児を形成する部分(胎芽胚葉)と将来胎盤を形成する部分(栄養胚葉)とに分かれるようになり、そうなって初めて着床する能力を獲得できるようになります。 このことを考えればなぜ卵管妊娠が最も多いのかを理解することができると思いますが、要するに、受精卵が着床能を獲得するようになってもまだ子宮内腔へたどりついていない場合に子宮外妊娠が起こると考えて良いわけですね。 その原因としては、 ・卵管上皮にある線毛の運動(受精卵を輸送する働きを持ちます)の異常 ・卵管の通過性の障害 などが考えられるわけで、このようなことは、クラミジアや淋病、あるいは妊娠中絶後などにより卵管自体あるいは卵管周囲に炎症が起こることが原因となる場合や、子宮内膜症による卵管周囲あるいは卵管を巻き込んでの癒着が生じた場合、卵管に憩室や発育不全、奇形などの異常が見られた場合などにより起こりうると考えられます。 この他、受精した卵が一度卵管を飛び出して、対側の卵管から侵入すること(外遊走)が原因となる場合や、卵管から子宮内腔を経て対側の卵管内へ侵入すること(内遊走)が原因で起こる場合もあるとも言われています。 いずれにしても、原因がはっきりしないケースもかなりの割合を占めるという事実を考えると、例えば卵管の通過性自体に問題があるような特殊な例を除いては、子宮外妊娠を事前に予防するということはきわめて困難なことであると考えておいた方が良いと言えるでしょう。 |
2.症状
子宮外妊娠といっても妊娠に変わりはありませんから、自覚的症状としては通常の妊娠と何ら変わるところはありません。すなわち、生理が遅れていることに加えて胸が張ったり尿が近くなったりという症状に始まり、つわりが出てくるようになるという自覚徴候は全く同じである、ということですね。しいて挙げるとすれば、普通よりもつわりの症状が軽い場合が多いというのが特徴と言えるかもしれませんが、正常妊娠や流産でもつわりが軽い場合がありますから、これをもって子宮外妊娠と判断できるものではないということは間違いありません。 ただし、卵管に妊娠した場合には、この場所でいつまでも発育し続けることは不可能ですから、いずれ限界に達するとその場所で流産し始まるか、または卵管が破裂することになります。それに伴う症状として、卵管流産tubal aboution の場合は腹痛と不正出血が、卵管破裂 tubal rupture の場合は腹腔内への出血量に応じた症状(少ない場合は卵管流産と同様の症状、多くなるほど腹痛が激烈となり、ひどければショック状態に陥るようになります)が現れてくることになります。特に卵管破裂の場合は数時間の間に腹腔内へ2000〜3000mlもの出血を来すこともあり、したがって輸血を必要とすることもしばしばで、放置すれば当然死に至る可能性があるものです。 どのくらいの妊娠週数になると流産したり破裂したりするのか?が気になるかもしれませんが、妊娠週数と卵管流産・卵管破裂が起こる時期との間には相関関係はなく、早い時期に破裂に至る場合もあれば4ヶ月以降まで流産徴候もなく発育する場合もあり、一概には言えません。 |
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3.診断
さて、子宮外妊娠の診断ですが、これがなかなか困難な場合が往々にしてあり、しばしば産婦人科医の頭を悩ませます。卵管破裂を起こして急激に全身状態が悪化すれば診断は容易となりますが、破裂が小規模で腹腔内への出血が緩やかに起こっている場合、卵管流産の場合、あるいはそのどちらも起こしていない場合などではなかなか診断が困難になります。 1)については、尿検査で比較的容易に妊娠を判断することはできるので問題にはなりませんね。
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上の写真は、経膣式超音波による典型的な子宮外妊娠の像を示したものです。このように超音波ではっきりと子宮外妊娠を診断できるケースというのはどちらかというと稀な方であると言えますが、一応参考として掲載しておきます。
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この他の診断法としては、以下のようなものが良く行われます。 3)については言うまでもないでしょう。 |
5)は、子宮内に妊娠していないことを照明するための方法です。
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4.治療
子宮外妊娠の治療は、薬物による治療と外科的治療(手術)の二通りがあります。 |