レディースホームFAQI.妊娠中の異常について

6.稽留流産といわれましたが、どういうことでしょうか?

 

 胎児の発育が停止したものの、腹痛や出血などのいわゆる流産徴候が全くないままに2週間以上経過してしまう場合を稽留流産といいます。切迫流産とは違い、治療しても妊娠を継続することは不可能な状態ですから、人工的に掻爬を行わなければなりません。

 さて、流産といってもいろいろと種類がありますから、まず流産の種類を妊娠経過にしたがって簡単に説明しましょう。右側に掲載した説明図を参考にしながら読み進めて下さい。

 

 まず最初に妊娠の確認が必要となりますが、これは主として尿による妊娠反応検査と超音波検査によって行われます。超音波検査は経膣式超音波の方が経腹式超音波よりも早期に子宮内の胎嚢(GS)を確認できます。
 これによって妊娠の判断がなされ、経過を見ることとなりますが、通常は胎嚢が確認されてから少なくとも2週間以上経過すると胎児の心拍が確認されるようになります。
 この時、まったく胎児の姿が確認されず心拍も確認できないことがあり、このようなケースを涸死卵(Blighted Ovum)と呼びます。出血や腹痛を伴わないことも多いため、後述の稽留流産の一つと考えて、「稽留流産」との説明を受けることも多いようです。
 どのような形の流産でも、最終的には子宮が収縮して子宮内容物を排出しようとする働きが起こるため、出血と腹痛がだんだん強くなって来るのが普通です。このような状態を進行流産(Abortion in progress)といい、厳密には症状があるだけでなく子宮口が開いてきた状態を指して呼ぶものです。この後子宮内容が排出されるに至りますが、この時に、妊娠内容がすべて完全に排出されるものを完全流産、絨毛や脱落膜など妊娠組織の一部が子宮内に残存してしまうものを不全流産と呼びます。

 胎児が正常の発育を示していても、経過中に胎児心拍が確認できなくなってしまう場合もあります。いわゆる胎児死亡の形になるわけですが、この時通常は進行流産へ移行する前に不正出血、腹痛を伴うようになるもので、この状態は延滞流産(Missed abortion)と呼ばれますが、全く症状を伴わないまま2週間以上経過してしまう場合もあって、このような状態を稽留流産(Retarded abortion)といいます。

 いずれにしても、完全流産に至ったもの以外のケースでは子宮内容を人工的に排出しなければならず(子宮内掻爬術)、放置した場合は出血が止まらなかったり、場合によっては子宮内に感染を起こして最悪子宮を摘出しなければならない場合もあります。

 一方、正常な妊娠経過をたどる途中、一時的に腹痛や出血が起こることがありますが、適切な治療を行うことによって正常の妊娠状態を継続することが可能な場合、これを切迫流産(Threatened abortion)といいます。この場合の最も有効な治療法は「安静」にすることに他なりません。

 以上をまとめると、一時的に流産しかかったが治療することで妊娠の継続が可能な状態が切迫流産、妊娠の継続が無理な状態で(=胎児の発育が停止)、腹痛や出血がない状態は稽留流産、症状がある場合は延滞流産、胎児すら確認できない状態は涸死卵と呼ぶ、ということになります。

 

 

 どのようなケースでも、流産の主たる原因は胎児側にあるものと考えられており、そのうち最も多いのは胎児自身の染色体の異常であると考えられています。とはいえ、精子や卵に原因があるものではなく、受精したあとの受精卵自体の問題であると考えて差し支えのないもので、すなわち、「その時できた赤ちゃんの生命力」の問題だと思って良いでしょう。

 流産する確率は全妊娠のうちの約10〜15%であると言われていますから、決して流産自体は珍しいものではありません。ですから、一度の流産ではそれほど神経質に悩む必要はないものですが、これが三度以上連続して流産に至ったとなるとその確率は0.1%となり、そうそうあることだとは考えられなくなります。
 このようなケースは習慣性流産と称し、何らかの異常が潜んでいる可能性が疑われますので、それに相応する検査を必要とすると考えるべきでしょう。これについては「流産を繰り返していますがどんな原因が考えられますか?」に詳細がありますのでこちらを参照して下さい。

また、流産後の生活等については、「流産後の注意点について教えて下さい」を参照して下さい。