レディースホームFAQA.基礎知識編

9.妊娠が最も早くわかるのはいつ頃ですか?

 

 妊娠したのかどうかを最も早く知る方法は、一般的には尿検査による妊娠判定でしょう。
 基礎体温や経膣式超音波断層法でもかなり早期に妊娠を判断することが可能ですが、早い時期に確実に妊娠を判断するとなると尿検査による妊娠判定が最も確実なものと言えます。
 尿検査による妊娠判定では通常、尿中のHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン;Human Chorionic Gonadotropin)というホルモンを検出します。このホルモンは受精卵から発生する絨毛という組織から分泌されるもので、妊娠した場合にのみしか検出されません。
 ただし、高温期に黄体機能の保全を目的としてHCG注射を行った場合はこの限りではなく、この場合には予定生理の頃に妊娠反応検査を行うと妊娠していなくとも反応が陽性になります。

 それでは、下のイラストを見ながらお話ししましょう。HCGは先述の通り受精卵から形成される絨毛という組織(→あとで胎盤を形成するようになる組織です)から分泌されるようになります。このホルモンの本来の働きは、卵巣に形成されている黄体を刺激して黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌を促し、これによって妊娠を維持していこうとするものです。
 このホルモンが尿中に排出されるようになるので、これを検出することで妊娠の判定が可能になるわけです。
 ところで、卵管内で受精してから子宮内へ着床し始めるまでは約1週間かかりますから、HCGが分泌されるようになるのも受精から少なくとも約1週間以上を経過してから、ということになります。さらに、妊娠判定検査薬で妊娠の判定が可能となる「尿中のHCG量が50IU/L以上」になるまではそれから1週間ほどが必要になりますので、どれだけ早く妊娠がわかるとしても受精から最低でも2週間以上が必要となる、ということになります。 

 

 ということから、もう一度「いつから妊娠の判定が可能になるのか」をまとめれば、「受精した日、もしくは妊娠したのではないか?という心当たりがある日から最低2週間以上経過してから」である、ということになります。
 現在市販されている妊娠判定検査薬は、ほとんどが尿中HCG量が50IU/L以上で陽性となるようになっているので、市販の判定薬で妊娠判定が可能になるのも同様に受精後2週間以上たてば可能である、ということになりますね。
 ちなみに、HCGの濃度を表す「IU/L」という単位ですが、「IU」というのは国際単位(Internal Unit)を表すもので、「尿1リットル中にどのくらいのHCG量があるか」を国際単位で表したもの、と理解してもらうと良いと思います。

 ところで、なぜ「50IU/L以上」なのでしょうか?もっとHCGに対する感度を上げれば、もっと早くに妊娠がわかりそうなものですよね?HCGは受精後1週間後から分泌し始めるわけですから、極端に考えればこの時期から妊娠の判定は可能になるのではないか?、と。HCGさえ検出できれば、妊娠判定は可能になるんじゃないか?、と。
 この理由はもちろん、検査精度を上げるという技術的側面によるところが大きいのですが、第一の問題点はHCGの検出時に起こりうる「LHとの交錯」という点にあります。
 LHというホルモンは、脳下垂体から分泌される、「排卵を促して黄体を形成させる」働きを持つホルモンですが、このホルモンの構造がHCGと非常に似通っていることが原因で、時としてHCGの代わりに妊娠反応を陽性としてしまうことがあり得ることが問題となるのです。
 LHの尿中の通常量は5〜10IU/L程度なので、「50IU/L以上」で妊娠反応陽性となる検査にはまず引っかからないのが普通ですが、排卵直前になると一時的に20〜50IU/Lほどに上昇するため、これが誤って妊娠反応陽性という結果をもたらすことがあり、これが精度を落とす一因となっている、というわけです。
 以前に比べると、LHとの交錯もかなり少なくはなりましたし、その分妊娠判定において「間違って陽性になる」というケースは減っているのは確かですが、未だに妊娠ではないのに妊娠反応陽性となるケースがあることは間違いなく、これが「50IU/L」という単位にとどめてある大きな要因であると言えるでしょう。

 近い未来には、HCG検出に対する感度をもっと上げることが可能となるでしょうし、それによってもっと早い時期に妊娠の判定が可能となるかもしれません。しかし、現状では「受精してから2週間以上」経過しないと妊娠の判定は不可能なのだということを知っておいて下さい。

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