レディースホームFAQM.乳房に関するもの編

2.乳房に痛みがあるのですが?

 

 まず、乳腺症という病気が疑われます。

 乳腺症というのは、ホルモンの不均衡によって発生する乳腺および支持組織(線維組織)の増殖性病変で、いわゆる腫瘍性病変(乳癌や乳腺腺腫など)とは異なるものです。ホルモン依存に発生するものですから、性周期によって症状が悪化したり軽快したりという特徴が見られます。通常は、生理が来る前に症状の悪化があり、生理が来るのとともに消失していくのが普通です。
 症状としては、乳房の痛みと輪郭のあまりはっきりしないしこりを感じることが多く、時に乳頭から異常分泌物(おっぱいのようなもの)が出ることもあります。 30〜40歳代に多く、閉経後にはほとんど見られません。また、月経異常、流産、授乳不十分などの既往歴を持つ人が多いといわれており、ホルモンバランスの乱れがベースにあることが示唆されます。
 乳腺症の問題点は乳癌との鑑別が難しいということで、自己検診でしこりを触れたり乳ガン検診で乳腺症と言われた場合はやはり専門的に診察を受けておくことをお勧めいたします。超音波による検査やマンモグラフィ、穿刺細胞診などによってしっかり鑑別をつけておくことが望ましいのですが、これらの検査は外科が専門になりますから外科を受診して下さい。
 なお、乳腺症が悪化して乳ガンになるという心配はありません。
 とはいえ、乳腺症に罹患している人には乳ガンが発生する率が高いというデータがあり(乳腺症に罹患していない人の3〜5倍とされます)、乳腺症を指摘された人は定期的に乳ガン検診を受けておいた方が良いでしょう。

 さて、次に疑わしいのは乳腺炎でしょう。
 乳腺炎では痛みのほか、乳房の発赤、腫脹を伴うことが多く、ほとんどの場合発熱を伴います。一般的には授乳期に起こることがほとんどで、乳汁のうっ滞がその原因になっていることが多いものです。
 授乳中ではなくても発生することはありますが、まれなケースと言え、例えば乳頭部分にキズがあってそこから菌が入り込んだというようなことでもない限りはまず発生することはありません。はっきりした原因がなく乳腺炎が発生した場合は、乳ガンが隠れている可能性も考えられますので必ずきちんと診察を受けておくべきでしょう。

 最後は乳ガンですが、実は乳ガンでは「あまり痛みを伴うことがない」のです。
 初発症状としては乳房にしこりを触れるだけであることがほとんどで、同じしこりを触れる疾患でも最初にあげた乳腺症とは痛みがあるかないかである程度は判別がつきます。しかし、痛みを伴うことは少ないけれども必ずしも「痛みがない」わけではありませんから(特に進行すると痛みを伴うことが多くなります)、自己判断をせずに必ず診察を受けておくようにしましょう。

 乳腺の疾患には他にも乳腺腺腫、乳腺繊維腫、乳腺嚢胞などがありますが、いずれも痛みを伴うことはほとんどありません。これらの疾患は乳ガンと同じくしこりを触れるだけという場合が多いため、鑑別はつけやすいものです。

 最後に乳腺症の場合の治療についてお話しいたしましょう。
 乳腺症は最初にお話ししたように、ホルモンの不均衡が原因となって発生する増殖性疾患です。
 したがって、
  1)ホルモンを用いて治療する
  2)外科的に切除する
  という2通りの方法が考えられます。
 1)については、通常男性ホルモンないしはタンパク同化ステロイドホルモン投与によってホルモン均衡の乱れを是正する方法(プリモボラン注射or内服、マスチゾール注射、ボンゾール内服など)が用いられます。
 2)については比較的腫瘤がはっきりしている場合に取られる方法で、悪性の疑いがある、腫瘤が硬くホルモン療法では改善しない、大きめの嚢胞を伴っている、などが適応となります。
 しかし、乳腺症はホルモン不均衡が改善されると自然に治癒するケースも多いため、特にこれから妊娠、出産を迎える若年齢の方に関しては特に治療を必要とせずそのまま経過観察で良いものと思います。
 不規則な生活や不摂生、寝不足、ストレスの多い環境など、ホルモンバランスを崩す可能性のある状況を改善するだけでも十分に効果がある場合もありますから、投薬治療を行う前に身の周りの環境を見直してみる必要があるかもしれませんね。

 

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