レディースホームFAQF.STD(性行為感染症)に関するもの編

5.クラミジアについて

 

 

 クラミジアは現在性行為感染症(STD)の中で最も多く、しかもさらに蔓延しつつある疾患です。Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)というリケッチアに類似した病原体により起こるもので、同じクラミジア属に属した菌による疾患として、トラコーマ、オウム病、クラミジア肺炎などが知られています。  

 感染は性行為により起こります。
 女性では最初に子宮頸管に感染して子宮頸管炎を起こしますが、症状として現れることはほとんどなく、多少おりものが多い程度の自覚症状しかないため放置されることが多いようです。男性側では排尿時に痛みがある、尿に膿が混じって出てくるなど、尿道炎の症状として現れてくることが多いようですが、無症状の場合もあります。
 頸管炎を放置すると、クラミジアは上行性に感染を拡大し、子宮内膜、卵管、そして最後には骨盤内へと拡がっていきます。卵管や骨盤内で炎症がひどくなると、今度は腹痛や発熱を起こすようになり、ひいては骨盤内で癒着を起こしたり卵管を閉塞する結果となって不妊症や流産、子宮外妊娠の原因となります。(骨盤内腹膜炎を参照)  

 

   
骨盤内腹膜炎による癒着です。
卵管を中心に癒着を起こすことが多く、この結果不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあります。
 
 

 

 妊娠中にクラミジアに感染していると、出産時に産道で胎児に感染し、結膜炎や新生児肺炎を引き起こすことがあることも知られてきています。1〜2週間の内服で完治すると言われているため、妊娠後期に内服した上で再検査を施行し、陰性を確認すれば帝王切開の適応とはなりません。  

 クラミジアの検査には、採血によるものと、内診で子宮頸管を検査するものとがあります。
  前者は、クラミジアに感染することにより生体反応として出現する抗体を検査するもので、通常IgG抗体とIgA抗体の2種類を検査します。これによって、クラミジアに感染したかどうか(IgG抗体値が高くなります)、クラミジア感染が現在活動的(=他の人に感染する可能性が高い)かどうか(IgA抗体値が高くなります)を推測します。
 後者は、子宮頸管の検査によりクラミジア菌自体がそこに存在するかどうかを知ることができます。この場合、頸管の細胞からクラミジア自身の抗原を検出するものと、クラミジアのDNAを検出するものとがありますが、前者の方が一般的でしょう。なお、男性の場合は子宮頸管のかわりに陰茎(尿道)の検査をすることになります。
 血液中の抗体検査からはクラミジアに感染したかどうかがわかりますが、治療により治ったかどうかまでは判断がつきにくいのが難点です。抗原検査についても検出精度に問題があり、感染を100%診断できないということ、骨盤や卵管にクラミジアが感染していても頸管部にクラミジアがいなければ検出できないという問題点があります。
 DNA検査はこの点で最も信頼の置ける検査法ですが、しかし高価であることと頸管にクラミジアが存在しない場合には検出できないということが難点となります。

 治療はエリスロマイシンを中心とした抗生物質の服用が主体です。
 1〜2週間の服用で大抵は治療が可能で、通常はクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッドなど)、テトラサイクリン(ミノマイシン、ビブラマイシンなど)、ニューキノロン(クラビッド、バクシダール、シプロキサンなど)のいずれかを1〜2週間内服します。(もっとも新しい薬では、1日1錠の内服で3日間服用するだけでも治療可能というものも発売されています)
  性行為感染をすることから、治療はパートナーとともに行うのが望ましく、両者ともに完治を確認した上で行為に及ばなければ、一度完治したのに再感染を繰り返すことになりますので注意をして欲しいと思います。