レディースホームFAQA.基礎知識編

基本:子宮や卵巣の正しい位置を教えて下さい

 

 女性の内性器(膣、子宮、卵管、卵巣)の大まかな位置は、下のイラストに示したとおりです。
 最初に膣と子宮の位置ですが、外陰部から身体のほぼ正中腺に沿って後上方(背側・頭方)に膣が延びていて、膣の一番奥からさらに正中腺に沿って上方(頭方)に子宮が 位置するのが普通です。この時、子宮が腹側に向いて位置しているものを子宮前屈、背側に向いているものを子宮後屈といい、前者の方が一般的です。(→子宮後屈についてはこちらを参照)
 膣の長さは7〜9cm、子宮の長さは7cmが一般的ですが、膣は伸縮性に富み分娩時や性交時にはかなり伸展することが可能です。
 対して、卵巣と卵管は左右に一対ずつ存在し、卵巣の位置は子宮の両側やや後上方(背側・頭方)にあるのが普通です。卵管は子宮の左右両側上端より発し、各側卵巣を取り囲むように存在しますが、その先端は骨盤内に遊離していて可動状態にあります。
 卵巣の大きさは3〜4cmでおおよそ母指頭大、楕円球状形であるのが普通です。卵管は長さ約10cm、細長い管状の組織で、先端にはイソギンチャクの触手のような卵管采という組織があり、卵巣から排卵によって放出される卵を卵管内へ誘導する働きを持っています。
 以上が、女性内性器のおおまかな位置です。

 

 

 さて、下のイラストは、上でお話しした女性内性器のさらに細かな構造を示したものです。
 こちらは知識として必要のある方だけご覧下されば良いものと思いますので、興味のある方だけご覧下さい。

 まず子宮についてですが、子宮は骨盤腔の底に位置していてその周囲を5つの靱帯(じん帯)によって支えられています。
 イラストにはそのうちの3つを示してありますが(5の円靱帯と8の基靱帯、17の仙骨子宮靱帯)、この他に膀胱子宮靱帯、広靱帯が存在します。いずれも骨盤底に子宮を固定するための靱帯です。広靱帯は子宮全体を包み込んで支える役割を、円靱帯は子宮体部を前方(腹側)に傾斜するように支える役割を持ち、仙骨子宮靱帯、膀胱子宮靱帯、基靱帯は子宮頸部をそれぞれ、後方の骨盤との間、前方の恥骨・膀胱との間、側方の骨盤壁との間で固定する役割を持つものです。
 このうち、仙骨子宮靱帯(イラストの17)が位置する場所は、ダグラス窩という、骨盤腔の底にあたる部分に相当します(ダグラス窩の場所についてはこちらを参照)。この場所は子宮内膜症の好発部位でもあるため、しばしば仙骨子宮靱帯にも子宮内膜症が発生して靱帯の短縮やその他の部位(卵巣、卵管、腸管など)との間での癒着を招くようになります。これは生理痛の悪化や性交痛、排便時痛を引き起こす原因となることが知られており、このような症状がある人の場合腹腔鏡や開腹手術によって、短縮した靱帯を切断したり癒着をはがしたりするだけでも症状が軽減することも良く知られています。
 子宮を栄養する血管は13、14の子宮動静脈が主となります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐し、子宮傍結合織内を通って子宮の頸部から子宮へ入り込み、上下二枝に分かれます。静脈系は膣、子宮、卵巣付近で静脈叢を形成し、そこから内腸骨静脈、下大静脈へと還流します。
 次に、卵巣を支える靱帯ですが、これには6の卵巣固有靱帯と7の骨盤漏斗靱帯の二つの靱帯があります。
 前者は子宮との間にある靱帯、後者は骨盤壁との間にある靱帯で、これらの靱帯によって卵巣は子宮と骨盤壁との間に支えられて存在しています。卵巣に腫瘍ができた場合、これらの靱帯を支柱にして骨盤の底の方へ下垂する形になるため、腫瘍がある程度以上の大きさになると両靱帯の付着部を中心にねじれを起こすようになります。これを、卵巣腫瘍の茎捻転といいます。茎捻転については別項(→「茎捻転ってどういうものですか?」)を参照して下さい。