妊娠中の風疹感染では、妊娠初期〜中期(妊娠4週〜16週頃まで)に感染した場合に問題となります。
この頃は器官形成期といい、赤ちゃんが様々な器官を形成している時期に相当するため、風疹に感染すると胎児に奇形を起こすことになります。風疹に罹患した時期によっても胎児の障害の程度は異なりますが、だいたいの主な胎児の異常としては、
・先天性心疾患
・眼症状(白内障、緑内障、網膜症など)
・聴覚障害(主に感音性難聴といい、中耳から脳に原因がある難聴)
などがあげられます。
風疹の抗体価(HI抗体価)の標準は8倍以上・256倍以下というのが正常と考えて良いでしょう。8倍以下では風疹抗体を持っていない、すなわち風疹に感染する恐れがあると考えましょう。256倍以上では最近風疹に感染した可能性があるということになりますが、この場合には
IgM抗体を検査する・期間をおいて抗体価を再検査するなどの方法により初感染の可能性、再感染の可能性を見極め、胎児への影響があるかどうかを判断します。
なお、再感染が疑われる場合には胎児奇形を起こす可能性はかなり低いと考えられていますが、初感染の場合も含めて出生前診断(DNA増幅による遺伝子診断)をすることが可能ですから、医師と相談の上受けるよう考慮しても良いと思います。
風疹は終生免疫と言って、一度感染すると二度とかからないと言われてきましたが、しかし再感染をすることもあることがわかってきており、またワクチン注射も100%ではなく、注射しているにも拘わらずいつの間にか免疫がなくなって罹患することがあることもわかってきています。
ですから、できればこれから妊娠を考える方は、妊娠前に一度風疹抗体価を調べておいて、自分が風疹に対して免疫があるのかどうかを知っておくようにして欲しいものです。
なお、1979年から1987年(昭和54〜62年)生まれの人の約半数は、風疹の予防接種をしていないそうです。これ以外の方は中学校時代にきちんと予防接種をしているそうですが、上記期間に相当する生まれの方は、できれば妊娠前に風疹抗体を持っているかどうかを検査してもし抗体を持っていない場合にはあらかじめ予防接種をしておくことをお勧めいたします。
また、予防接種によって獲得した抗体は数年以上経過すると消失してしまう場合もあるようです。したがって予防接種をしているからといっても必ずしも妊娠する時点で抗体を持っているとは限りませんから、これから妊娠を考えている場合にはやはり事前に風疹抗体があるかどうか血液検査で調べておくと良いでしょう。
|