レディースホームFAQF.STD(性行為感染症)に関するもの編

6.淋病について

 

 淋病 gonorrhea は、グラム陰性球菌に属する淋菌 Neisseria gonorrhoeae によって起こる細菌感染症です。
 男性、女性で多少病的態度が異なりますが、ここでは女性側だけのことについてお話しすることにします。


1.感染経路

 感染は性行為のみによって起こります。
 したがって、感染を防ぐには性行為感染しないような注意(コンドームの使用、有効な抗生剤の服用、性行為をしないなど)が必要となります。最も現実的な予防法はコンドームの使用となりますが、淋病というのは不顕性感染(感染して菌を保有しているにもかかわらず全く症状が出ない、というもの)の頻度がかなり高いため、「全然症状がないから大丈夫」と考えてコンドームを使用しないという判断は非常に危険です。
 また、淋病は咽頭炎を起こすことも知られているので、フェラチオによって淋菌性咽頭炎を起こす危険性もありますから注意を要します。

2.症状

 女性における淋病の特徴は、膣→子宮→卵管→骨盤内へと菌が進行して行き、最後は骨盤内で腹膜炎を起こすに至る可能性があることでしょう。骨盤内腹膜炎あるいは卵管炎では、卵管の動きが制限されたり閉塞を起こしたりすることで、不妊症を来す可能性があります(骨盤内腹膜炎症例の20%程度に不妊症の発生が見られるとの報告があります)。淋菌感染症全体のおよそ10〜20%程度に骨盤内腹膜炎が発生するものと考えられています。

 女性においても不顕性感染は比較的多く存在すると考えられているため、感染初期に必ずしも症状を呈するものではありませんが、典型的なものであれば感染後1週間ほどで急性尿道炎、急性膀胱炎症状にともなっておりものに異常が見られるようになるのが普通です。すなわち、急性尿道炎あるいは急性膀胱炎症状としては排尿痛、排尿困難、頻尿、残尿感などが現れ、それと同時に黄色っぽい(あるいはクリーム状の)比較的粘り気が強く、時に悪臭を伴うようなおりものの増加が認められるようになります。しかし、このような典型的急性期症状が出現することは最近はどちらかというと少なく、むしろ卵管や骨盤内で炎症を起こして初めて症状が出る場合の方が多いと言えるかもしれません。

 ところで、通常おりものの検査をする場合には一般細菌培養として提出しますが、これには淋菌の培養は含まれていないことが多いようです。したがって、おりものが多いため検査に出すといっても淋菌の培養には出していない場合が多いと思いますので、もし淋病でないかどうかが心配であるなら「淋菌の培養検査もついでにお願いします」とこちらから頼んでおいた方が無難かもしれません。

3.治療

 淋病治療の第一選択薬は、梅毒同様にいまでもペニシリンです。
 ペニシリン系抗生物質に耐性を有する菌が増加しているのは確かですが、やはり一番感受性を示し治療薬として最も有効と考えられるものはペニシリン系抗生物質に他なりません。このほかセフェム系抗生物質やアミノグリコシド系抗生物質なども使用されますが、第一選択薬としてはペニシリン系抗生物質が最も使用されています。
 なお、男性に比べて女性では一般的に淋病治療が困難であるといわれ、投薬量は男性の倍が必要であると考えられています。したがって、彼氏もしくはご主人の治療が1週間で済んだとしても、だからといってあなたも1週間で良いというわけにはいかないことは知っておいた方が良いでしょう。きちんと医師に言われたとおりに内服するように心がけましょう。